展示会か、ウェビナーか ─ DX顧客を生む「2段ロケット」の設計

DX Pioneer Insights EP.37 — 展示会か、ウェビナーか
DX Pioneer JP EP.37 2026年6月13日 🤖 Created with Claude (Anthropic)

展示会か、ウェビナーか
── DX顧客を生む「2段ロケット」の設計

「展示会に出ても、名刺は集まるが受注につながらない」─ 中小企業のDX相談で、いちばん多いぼやきの一つだ。前回(EP.36)は、テレセールスと対面を「分業」でつなぐ設計を見た。今回はその一歩手前、そもそも見込み客とどこで出会うか─ 集客チャネルの話だ。日本のBtoBでは展示会とウェビナーが二大チャネルだが、両者の役割は微妙に違う。結論から言えば、勝っている会社は「展示会か、ウェビナーか」で迷っていない。展示会で広く出会い、ウェビナーで深く育てる─ この「2段ロケット」を最初から設計している。データで読み解く。

★ KEY INSIGHTS ━ この記事のポイント
展示会はBtoBマーケ施策の実施1位(52.3%)。出展目的1位は「リード獲得」(56.5%)。一方ウェビナーも目的1位がリード獲得(59.8%)─ 両者は競合ではなく役割が違う(IT Communications・n=237・2025)
2026年の論点は「量」ではなく「質」。「展示会のROIが合わない」と答えた企業は42.7%、決裁者に「十分接触できる」はわずか9.7%。媒体選定で重視する指標も「ターゲットの濃さ」(43.7%)がCPA(35.9%)を逆転(ProFuture・103社・2026)
展示会で獲得するリードの約75%は「情報収集段階」。勝負は会場ではなく、行事後48時間以内の後追いで決まる
ある食品メーカーの「試食+オンライン商談」ハイブリッドでは成約率が15%→25%へ。鍵は展示会をやめたことではなく、展示会とウェビナーを一本につなぐ「2段ロケット」設計
52.3%展示会=BtoB
施策実施1位
59.8%ウェビナー
目的=リード獲得
42.7%「展示会の
ROIが合わない」
9.7%決裁者に
接触できる

📊 DATA VISUALIZATION ━ 展示会 vs ウェビナー(2026年)

Trade show vs webinar lead generation data 2026
EP.00 ✓ 完了シリーズ紹介 ─ なぜこのブログを書くのか EP.01 ✓ 完了インサイドセールスという武器 ─ 中小企業DX入門の最短ルート EP.02 ✓ 完了DX提案が断られる理由 ─ 「持ち帰ります」の先にあるもの EP.03 ✓ 完了DX受注率を上げる処方箋 ─ 断られない提案書の作り方 EP.04 ✓ 完了DX意思決定者プロファイル ─ 社長が動く「3つの間」 EP.05 ✓ 完了業種別DX優先度 ─ 製造・卸・小売・サービス比較 EP.06 ✓ 完了規模別DX課題マップ ─ 20人以下と101人以上の違い EP.07 ✓ 完了「74%の失敗」 ─ 導入を阻む5つの壁と突破口 EP.08 ✓ 完了経営者年齢とDX受容性 ─ 60代以上が市場の半分 EP.09 ✓ 完了DX顧客継続率・LTV分析 ─ 長期契約を生む提案設計 EP.10 ✓ 完了中小企業DXコンサル市場の真実 ─ 大手に頼れない理由 EP.11 ✓ 完了SaaS型ERPで変わる中小企業の経営 ─ freee・MF比較 EP.12 ✓ 完了会計ソフト3択の選び方 ─ freee・弥生・MF比較 EP.13 ✓ 完了AI搭載CRM比較 ─ Salesforce・HubSpot・kintone EP.14 ✓ 完了採択率が落ちた今、DX補助金コンサルの選び方 EP.15 ✓ 完了外資か国内か ─ 中小企業DXベンダー選定の本質 EP.16 ✓ 完了DX提案でROIを設計する技法 ─ コスト削減×ペイバック EP.17 ✓ 完了DX提案書 売上向上シナリオ ─ 数字で語る技法 EP.18 ✓ 完了DX提案書 リスク回避・コンプライアンス EP.19 ✓ 完了DX提案書 人材・組織変革 ─ 変更管理の設計 EP.20 ✓ 完了SNS・LinkedInで中小企業DX受注を増やす EP.21 ✓ 完了経営ビジョンとDX戦略を「連動」させる技法 EP.22 ✓ 完了クラウドERPで変わった製造の現場 ─ 中小3社の実証 EP.23 ✓ 完了freee・弥生会計Next・MFクラウド 3択比較 EP.24 ✓ 完了ERP導入失敗の3つのパターンとリカバリーの鍵 EP.25 ✓ 完了ERP×CRM連携で営業を変える ─ HubSpot×freee×iPaaS EP.26 ✓ 完了AIとERPが融合する2026年 ─ 生成AI統合 EP.27 ✓ 完了DXコンサルが実践するSEO×コンテンツマーケ戦略 EP.28 ✓ 完了DX無料診断ファネル ─ リード獲得からクロージング EP.29 ✓ 完了DX事例集ホワイトペーパーで商談が動く EP.30 ✓ 完了メルマガ・LINEでDX顧客獲得 ─ ナーチャリング設計 EP.31 ✓ 完了DXウェビナー企画・集客 ─ 月10件以上のリード設計 EP.32 ✓ 完了DXコンサルの単価相場と市場規模 ─ 「月120万円」時代の価格戦略 EP.33 ✓ 完了成果報酬型・サブスク型DXコンサルの設計 ─ 払いやすい料金モデル EP.34 ✓ 完了中小企業DX営業の最前線 ─ 導入率43%・成功率21%の勝ち筋 EP.35 ✓ 完了営業DXにAIをどう「定着」させるか ─ 成功率21%の壁を超える EP.36 ✓ 完了テレセールスか対面か ─ 中小企業DXは「分業設計」で決まる EP.37 ▶ 現在展示会か、ウェビナーか ─ DX顧客を生む「2段ロケット」設計 EP.38 Coming soonリードの75%をどう動かすか ─ 展示会後48時間のナーチャリング

01. 展示会とウェビナーは「競合」ではなく「役割分担」

まず現状を数字で押さえよう。IT CommunicationsがBtoBマーケ担当者237名に行った「イベント施策実態調査2025」(2025年10月調査)で、前年度に実施した施策の1位は展示会(52.3%)。2位のメール(37.1%)、3位のオンラインセミナー(36.7%)を大きく引き離した。展示会の出展目的は「リード獲得」(56.5%)と「認知度向上」(55.6%)が僅差の1・2位。一方、ウェビナーの目的は「リード獲得」(59.8%)がより強く、リードナーチャリング(育成)目的も展示会より約8ポイント高い。

つまり、展示会は「認知・接点づくり」、ウェビナーは「リードの育成」という役割分担が、データではっきり出ている。DXコンサルのように検討期間の長い商材ほど、この二つを組み合わせる設計が合理的だ。「どちらに出るか」で迷うのは、そもそも問いの立て方が間違っている。

指標数値出典・年
BtoB施策の実施1位=展示会52.3%IT Communications 2025(n=237)
展示会の出展目的1位=リード獲得56.5%IT Communications 2025
ウェビナーの目的1位=リード獲得59.8%IT Communications 2025
「展示会のROIが合わない」42.7%ProFuture 103社 2026
決裁者に「十分接触できる」9.7%ProFuture 103社 2026
獲得リードのうち情報収集段階約75%サイル・サブリッジ 2025

02. 2026年の論点は「量」から「質」へ ─ コンサル視点の分析

2026年、潮目が変わった。ProFutureがBtoBマーケター103社に行った調査(2026年2月)では、8割以上が予算を維持・増額する「攻め」の姿勢を見せた。にもかかわらず、約9割が「決裁者に接近できていない」と答えている。とりわけ「ROIが合わない」と感じる施策の1位が展示会(42.7%)。決裁権を持つキーマンに「十分接触できる」と答えた企業はわずか9.7%だった。

ここで注目すべきは、媒体選定で重視する指標の変化だ。これまで王者だった「リード獲得単価(CPA)」(35.9%)を抜いて、「ターゲット層の濃さ」(43.7%)が初めて1位に立った。「安く大量に」から「高くても決裁者が確実に含まれる」へ─ 価値基準そのものが移り変わっている。展示会のROIへの不満は、展示会が悪いのではなく、名刺の枚数を成果とみなす旧来のKPI設計が時代に合わなくなったことの表れだ。DXコンサルがまず提案すべきは、出展する・しないの判断ではなく、「何を成果と数えるか」の再定義である。これは難しい話ではない。展示会で集めた名刺を母数とせず、そこから「決裁者・特定職種が何人含まれたか」「48時間以内に何件が次の接点に進んだか」を追う─ ただそれだけで、施策の見え方は一変する。

💬 現場エピソード ━ 「展示会、もうやめようかと…」
田中社長(製造業・58歳)
毎年、展示会に小間料と人件費で200万近くかけてるんだ。名刺は300枚集まる。でも、そこから契約になったのは去年ゼロでね。正直、もうやめようかと思ってる。
コンサルタント
その300枚、展示会の翌週は何をされていますか?
田中社長(製造業・58歳)
…正直、お礼メールを一斉送信して、あとは営業が手の空いたときに電話する程度だな。気づいたら一ヶ月経ってることも多い。
コンサルタント
そこなんです。展示会で集まるリードの約75%は、まだ「情報収集」の段階。その日に売れる相手じゃないんです。だから展示会は「出会いの入り口」と割り切って、続きはウェビナーで育てる。実際、試食会とオンライン商談をつないだ食品メーカーは、成約率が15%から25%に上がりました。
田中社長(製造業・58歳)
なるほど…展示会だけで売ろうとしてたのか。出会った後の「続き」がなかったんだな。
コンサルタント
その通りです。展示会をやめるのではなく、ウェビナーという2段目をつける。それだけで、同じ300枚の名刺がまったく違う意味を持ち始めます。

03. 中小企業の「2段ロケット」設計 ─ 3ステップ

展示会かウェビナーかで消耗せず、両者を一本につなぐ。勝っている中小企業が踏んでいる順序を、3つのステップに整理する。

📊 2段ロケット設計 ━ 3ステップ
ステップ1 ─ 「展示会で広く、ウェビナーで深く」を前提に設計する。 展示会は認知・接点づくり(目的:リード獲得+認知)、ウェビナーは育成(目的:リード育成)。DXは検討サイクルが長いので、単発の展示会で受注を狙わず、ウェビナー・メールと結ぶシーケンスでKPIを組む。
ステップ2 ─ KPIを「名刺の枚数」から「ターゲットの濃さ」へ。 重視すべきは決裁者・特定職種がどれだけ含まれたか。自社主催のミニセミナーやニッチ展示会を使えば、課題意識の高い来場者(=良質リード)が集まる。「安く大量」より「濃く確実」に舵を切る。
ステップ3 ─ 行事後「48時間の後追い」を仕組み化する。 リードの75%が情報収集段階だからこそ、自動スコアリングとMA連携の後追い体制が商談化率を決める。これ自体が「DXコンサルが何を解決するか」の生きたデモになる─ 自社の営業プロセスが、そのまま提案商品のショーケースだ。

展示会か、ウェビナーか─ この二択で消耗している間に、勝っている中小企業はとっくに両者を一本の線でつないでいる。展示会で広く出会い、ウェビナーで深く育て、48時間以内に動く。名刺の枚数ではなく、決裁者の濃さで測る。チャネルは奪い合うものではなく、つなぐものだ。次回は、その「続き」の核心─ 情報収集段階にとどまる75%のリードを、行事後48時間でどう動かすか、ナーチャリングの設計を掘り下げる。

▶ NEXT EPISODE EP.38 ─ リードの75%をどう動かすか ─ 展示会後48時間のナーチャリング設計 展示会で出会ったリードの約75%は、まだ買う段階にない。この「情報収集段階」の見込み客を放置すれば、せっかくの接点は一ヶ月で冷める。次回は、行事後48時間以内に動く自動スコアリングとMA連携、そしてウェビナーへの誘導設計で、眠っている多数派をどう商談へ進めるかを具体的に扱う。
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